「要約」とはすなわち「ミスリードの起点」

データ分析や情報伝達において、情報はしばしば「要約」されます。

「要約」とは、情報やデータの大量性や複雑性を削減し、情報提供者が重要と考える、あるいは強調したいポイントを簡潔に伝えるプロセスです。

要約は全体を俯瞰する余裕がないときには便利です。
しかし、「情報提供者が重要と考える」、あるいは「強調したいポイント」だということは、同時に、「ミスリードの起点である」ということにも常に注意が必要です。


「要約」代表的な例としては、統計の「平均値」などが挙げられます。

「平均値」とは、複数データのすべての数値を合計し、データの個数で割ったものです。
全体の性質を示す指標としてよく使われるもののひとつです。

たとえば、少し古い平成21年度の資料ですが、厚生労働省のデータによると、2021年の日本全体の平均年収は547万円とのことです。

この数字を見て、どんな印象を持つでしょうか。

平均値は、確かに、重要な指標のひとつです。
しかし同時に、この数字だけしか見ないとしたら、それは年収の分布に対する「ミスリード」の起点にもなります。

「日本全体の平均年収は547万円」と聞かされると、訓練されていない方の多くが、「547万円くらいの年収の人がいちばん多く、年収の分布は547万円を中心に正規分布しているのだろう」という印象を抱いてしまいます。


しかし、どうでしょうか。
あなたの実感と、「年収の分布は547万円を中心に正規分布している」という思いこみとの間に、違和感を抱くことはないでしょうか。


実際、この思いこみは誤りです。

年収の分布は、以下の図のようになります。

100万円単位で分割すると、年収200-300万円の層がいちばん厚く、全体の13.9%。年収500-600万円の層は8.9%です。
年収100万-400万円の層だけで全体のほぼ4割を占めています。

厚生労働省資料:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa09/2-2.html


上記は「要約」だけを見ることで生じるミスリードの典型例です。

一次情報、つまり生のデータを見ずして誰かによって「要約」されたものを扱うときは、その「要約」はあくまで「生データ」ではなく、「情報提供者が重要と考える」、あるいは「強調したいポイント」にすぎないということに常に気づいていることが大切です。

「要約」のうしろにある生データの姿を想像するには、日ごろからの学びが大切です。
すべてがミスリードの元になるということではありませんが、要約に違和感を感じたときには、一次情報に当たることも大切です。
  • セールス担当者にとって都合のよい情報だけを示す要約された情報、失敗を隠すための部下からの都合のよい状況説明、一方の当事者を不利に陥れて対立を煽りたいマスコミの記事、得票のために自己に都合のよい要約だけを喧伝する政治家の演説等々、「要約」はどこにでも見受けられます。

    あなたが最近見かけた「要約」を挙げてみてください。
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